気付くと目の前にやや青ざめたよく知っている端正な顔があった。

「あっ・・オレ・・・」

「大丈夫か?桑原君」

起き上がろうとすると身体のあちこちが痛む。

「応急処置はしておきましたよ。・・・でもどうして防がなかったんですか?」

「え?」

今更ながら桑原は自分と蔵馬の服のあちこちが焼ききれていることに気付いた。

そしてあの時。

蔵馬の攻撃の一瞬、いや半瞬前。

「オレは・・・」

何を考えていたか。全部が津波のように思い出されて桑原は絶望的な気持ちになった。

「桑原君が全く俺の攻撃を防ぐ気がないのがわかって途中で気を無理やり止めたから力が暴発しちゃったんですよ」

蔵馬の語尾が微妙に変化している。

今までの付き合いでそれがどうやら怒っている証拠らしいと桑原は気付けるようになった。

「・・・ゴメンな」

「だからどうして」

「・・・似てんだよ」

「え?」

「お前が似てるんじゃねえ・・・お前に・・・逆だったのかよ・・・」

桑原はひとつかぶりをふると手を握り締めて何かを考えているようだった。

何を言ってるんだ?

蔵馬は理解できないといった表情をして眉間に皺を寄せていたが

「わりィ、蔵馬。オレ、ダメな生徒だよな。全然上達しねぇし・・」

「なんだ。そんなこと悩んでたんですか」

桑原の言葉にようやく顔を緩ませた。

「気にすることないよ。桑原君はがんばってるし、上達もしてる。普通人間はそんなに急激に 能力があがることはないし」

「・・・・」

「自分で気付くほどの能力向上っていうのは必ず体に負担がかかるものなんだよ。でもそうだな。 どうしてももっと力を上げたいなら・・・」

今度は顔全体で笑う。そうしているとこの半妖怪はひどく少年めいてみえた。

「裏ワザがあるよ」

「・・・何だ?伊東家か?」

「なにそれ」

「オマエ、テレビみねーんだったか?」

「ニュースとかなら見るけど。一応これでもニンゲンだからね」

「悪いけどオマエがトリビアとか見てるとこ想像できねぇ・・・」

「あと相撲とか好きだな」

「へ?」

「千代の富士が好きだったんだ」

「・・・しびぃな。」

「知ってる?千代の富士の土俵入りの足の高さ!すごいよ!あと塩を撒くときのポーズ! でも何といってもあの根性がすごいよね」

「な、なんかすごい蔵馬くんの意外な一面をみてしまったよーな・・・」

くだらないことを言い合っているのは何かを内に籠めているから。

そんな感覚を二人ともが共有していた。

「で?裏ワザって?」

「性交するんだ」

何も考えないで笑って答える。それは少し不可能だったような気がする。

「あ?何に成功するんだ?」

「ちがうって桑原君。サクセスじゃなくてセックス」

しかし表情的には完璧な笑顔だった。

笑っている瞳の蔵馬はとても妖怪にはみえないなぁと桑原は頭の隅でぼんやり思っていた。







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