瑠璃も玻璃も1




年齢のわりには長じたその肩に手をまわしてその胸の厚さに触れて改めて思う。

「立派」

思ったつもりが声にでたようだ。

「オマエがそんなこと言うとは意外」

長身をいかして相手にのしかかりながらそれでも表情には余裕があまり感じられない。

その軽口は自分への精神安定剤がわりみたいなものだろう。

肩にまわした手を掴まれて地面へおしつけられながら蔵馬は変な顔をした。

「なに考えてるんですか。身体のハナシですよ」

服を脱がせるのに忙しい手を一瞬止めて「へ?」という顔をした桑原をみて

蔵馬はくすくすと笑った。

「AVの見過ぎじゃないの?」

ヒトがガチガチに緊張してるっつーのに・・・

なぜか下ネタに思考が直結してしまっていたらしい自分をもふりかえり、

桑原はちょっと不貞腐れた。

男に上に乗られたまま笑いつづける蔵馬の顔を雲の影がゆるゆると流れて行く。

先日の記憶を留める地面の跡は、すぐ2,3mほど先に土がややめくれているのがみえる。

桑原はそれを見るとでもなくながめる。いい光景といえるのだろうか?

いまここになぜこうしているのだろう。

なぜ秋の日の午後に自分は脳内を興奮物質であふれさせ

わけのわからない感情に支配されてそして笑われているのだろう。

そしてなぜさっきまで怒っていたコイツはこんな顔をして今笑えるのだろう。

こんな場面での彼の姿はひどくしどけなく手慣れているようにも見え、

だのに頬のかがやきのみずみずしさはまちがいなく

未熟な青年の香をはなっていた。



つい一時間前。

自分でも認めるがけっこう気ぃ使いな桑原は毎日気にはなっていた。

いや、気にしているどころではない。

ただなんと言って蔵馬に会ったらいいのか自分の態度を決めかねていたため

今日まで無為に来てしまった。

そして数日前からすこぶる体の調子が良い。

これはやはり俗に言う、身体の相性が・・・

「桑原さーん なんか顔赤いッスよー?」

「熱あるんじゃないスか?」

いつもの3人が桑原のまわりを蛇行してあるきながら口々にいろいろなことをいうので

桑原は現実世界にひきもどされた。

とりあえず腕をめたくたに振り回してみせる。

「なにぃ?!オレはこのとーり元気ビンビンだっ」

「その無駄な元気があやしい・・・」

「なんだとー?」

校庭には校門へと横切る生徒の列のながれが増え続けている。

大勢の生徒の話し声や叫び声が交差している中で桑原はぴたっと立ち止まった。

カン(霊感?)だけは本当によい。









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